2010.11.23
会計士試験合格発表
みなさん、こんばんは。
先週、公認会計士試験の合格発表がありました。
今年は、話題性のある人の合格が多いようですね。
例えば、16歳の合格者が出たとか、バスケ日本代表選手が合格したとか・・・
昔の1次試験という壁がなくなって、誰でも受験できるようになったため、
多種多様な方が合格されるようになり、金融庁の思っていた通りになって
きたのではないか?と思います。
ただ、一番の問題は、合格者の就職難です。
さんざん新聞やテレビで取り上げられていますが、これに対する金融庁の
対応は、『民間企業で採用してほしい』です。
会計士試験に合格しても、3年間の補習所(学校)通いと、実務経験2年を
乗り越えないと公認会計士として登録はできません。
それまでは、いくら試験に合格したと言っても『無資格者』なのです。
ですから、16歳やバスケの選手がせっかく最大の難関を突破したとしても、
学校3年、実務経験2年をクリアしないと無資格者なのです。
学校3年はお金さえ払えば通えますし、監査法人にめでたく採用されれば、
通常は授業料は監査法人が払ってくれます。しかし、問題は実務経験です。
監査法人に勤務していれば何の問題もありませんが、監査法人に採用されなかった
場合が問題です。
規定上は、民間企業で有価証券報告書などの作成業務に従事していたり、
非常勤でもいいので監査を2社やったことがあったり、資本金の大きなコンサル会社で
5億円以上の会社のデューデリジェンス業務をやったりする必要があります。
我々の業界内では、すでに何とか雇ってあげてくれー的な動きはここ数年ありますが、
それでもカバーしきれず、とうとう民間企業に採用をお願いすることになったのです。
しかし、勉強ばかりしてきた合格者が実践で即戦力として役に立つことはほぼ皆無で、
しばらくは理論と実務の違いに悩まされながら、他の新人と同様に社会人1年目として
勉強していくことになります。もちろん、通常のマナー教育なども必要になるでしょう。
そういった状況で、企業が会計士の卵を喜んで採用するか?しかも、週3回程度は
夕方から学校に通わせる必要があるので、残業させられない。。。
私は、これは間違っていると思っています。
そもそも、公認会計士って何?という話です。
税理士との違い、日商簿記1級合格者との違いは何でしょうか?
最大の違いは、監査ができるということです。
つまり、さまざまな業種の監査をすることで、幅広い業界の知識を身につけ、
金融商品取引法が求める開示とは何か、会社法が求める開示とは何か?
投資家保護とは?株主保護とは?といったことを知っていることだと思います。
独立してから特に思いますが、監査法人時代に学んだ各業種の特殊性、
監査的観点から見た企業のリスクは、独立後に非常に役立つもので、
クライアントの方もそういう視点で会社を見てもらえることにメリットを感じて
おられるケースも多々あります。
会計士に合格して、いきなり民間企業で働いて、果たして公認会計士として独自性のある
スキルが身に付くか?10年後のその人についているスキルは、日商1級を取得して
同じ仕事をしている人と変わらないのではないか?と思うのです。
やはり、会計士の難関を合格したら、希望すれば必ず監査法人に3年間勤務して
一人前の会計士になってから、企業内会計士だの独立だのすればいい。
そういう流れを作る必要があると思います。
そのためには、
・試験合格者の給料の削減(最終試験合格までは丁稚奉公だ)
→新人採用に対する監査法人の負担を軽くする。ワークシェアリング。
・監査法人から独立しやすい制度の確立(今はいくら監査が優秀でも独立したらできる仕事はない)
が必要
→やる気のあるものはどんどん独立する。フン詰まりの解消。
いろいろ熱く書きましたが、エアーズで11月初旬採用した内田さんも昨年の合格者で
就職浪人をしていましたが、話を聞いていると金融庁のあまりにもお粗末な対応に
少々腹を立てています。
弁護士さんも同じような状況だとは思いますが、資格をとったから安心という世の中では
なくなってしまったなーと感じる今日この頃です。一人前の資格をとった後については、
実力主義で放っておいても良いと思いますが、一人前の公認会計士になるまでは、
金融庁として責任をもって人材を育成する制度を設けるべきだと思います。
今日は少々ややこしい話で申し訳ありません。
井上 豪