2011.04.18
企業財務会計士 仕切り直し
みなさん、こんばんは。
今朝の日経新聞に出ていた記事ですが、
『企業財務会計士 13年導入困難に』
企業財務会計士とは、政府が公認会計士の就職浪人問題に
対応するために、2013年に導入を予定していた資格ですが、
野党の反対を受けて、議論が仕切り直しとなりました。
仕切り直し=白紙撤回=否決されたようなもの
もともとこの制度に、私は大反対でした。
近年、金融庁は会計士が不足しているといって、大量の合格者を
出し続けてきました。アメリカでは20〜30万人程度と言われる
公認会計士が、日本ではまだ2万人程度。
アメリカに追いつけ、追い越せの勢いで合格者をここ3〜4年増やし
ましたが、実際の監査の現場ではそれほどの会計士は必要ありません。
そもそも、日本の監査のやり方とアメリカの監査のやり方は大きく異なっており、
日本の監査は効率的に実施されているのです。
にもかかわらず、アメリカの資格者人数だけを見て、日本は少ないからアメリカ
並みに増やすというのは余りにも短絡的です。
合格者が増えた当初(4〜5年前)は、確かに内部統制や四半期決算といった
会計士不足の実情がありましたから、大量合格は喜ばれました。しかし、
そこから合格者を減らすまでが遅かった。
昨年辺りからようやく合格率が低くなり、落ち着きを取り戻しましたが、
すでに大量に発生した合格者兼就職浪人は、行き場をなくしています。
公認会計士の資格は、実務経験を2年以上行わなければ、最終試験を受けさせて
もらえませんので、仕事がないと厳密には公認会計士になれないのです。
前置きが長くなりましたが、この就職浪人達を何とか、
民間企業に就職させて生活できるようにということで、設けられたのが
この企業財務会計士です。
名前はかっこいいかもしれませんが、企業財務会計士は一体何が得意なのか?
会計士の試験を合格しただけの知識であれば、一般企業で役立つレベルは、
簿記検定1級を保有している人と大して変わりません。
公認会計士の強みは、たくさんの企業の監査を経験し、各業種や各会社の特性を
理解していることだと思います。
金融庁が、企業財務会計士をアピールしていましたが、民間企業の方もバカじゃ
ありませんから、採用してどうなるの?といった感じで実務界では冷ややかな目で
見られておりました。
この声に対して、金融庁は有価証券報告書で企業財務会計士の活用状況を
報告する項目を設けようとして、対抗していましたが、今回、終止符が打たれた
形になったわけです。
個人的には、就職浪人の方を1名採用し、また、別に1名をクライアント様の上場企業に紹介
して採用していただきました。
民間企業の中に会計士が就職浪人で困っているなら、
1名ぐらいは新人採用の感覚で雇ってもいいとお考えの企業もあります。
そういった企業に期限付きで採用してもらい、とりあえず、会計士の最終試験だけは受けられるようにすることが最も重要であると思います。
資格の名前で片づけるのではなく、民間企業と就職浪人の会計士の両方にとってプラス
となる政策を打ち出していただきたいものです。
井上 豪