エアーズブログ

「三方よし」の精神で、「日本の会社を強くする」

船戸明の公会計改革「待ってくれ!」

ふるさと納税と引当金

投稿日時: | 投稿者:

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 一昨日、ある方からふるさと納税について質問を受けました。ふるさと納税をするにはどうすればいいですか、と。

 ふるさと納税に対する私自身の意見はさておき、ごくごく大きな流れと、詳細を記したホームページをお答えしました。

 すると昨日、たまたま日本経済新聞に掲載されたのが、「ふるさと納税、ポイント制が便利」という記事です。

「ふるさと納税で「ポイント制」を採用する自治体が増えている。寄付をすると、その額に応じて一定数のポイントが得られ、そのポイントを返戻金と交換する。通常の方式だと寄付する際に返礼品を決める必要があるが、ポイント制は自分の好きなタイミングで選ぶことができる」。

 記事を読むと、ポイントの有効期限は自治体によって様々。期限なしの自治体もあれば、最長2年といった期限を設定している自治体も。

 ふるさと納税の公会計における会計処理を想像してみました。受ける寄付については、純資産変動計算書の純資産の増加に計上でしょう。一方、返戻品に関する費用は行政コスト計算書に計上されるはず。

 通常の方式だと、寄付を受けた時点で返礼品も確定しますので、収益と費用が同時に確定します。

 ポイント方式だと、寄付を受けた時点で返礼品が確定しません。しかも、有効期限があれば、ポイントは使われないまま消滅することもあり得るでしょう。この場合に必要な処理が、ポイント引当金です。

 ポイントと聞いて思い浮かべるのは家電量販店。たとえばヤマダ電機の貸借対照表には「ポイント引当金」が計上されていて、会計方針には次の記載があります。

「当社は、顧客に付与したポイント使用に備えるため、将来行使されると見込まれる額を計上しております」

 大雑把に言えば、「ポイント付与額×使用率」がポイント引当金の残高ということ。ふるさと納税にポイント制を採用している自治体におかれましては、ポイント引当金の検討をお忘れなく。

カテゴリー:船戸明の公会計改革「待ってくれ!」, 財務書類(公会計)

三次元くん

投稿日時: | 投稿者:

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 公会計(もっと広く行政サービスの提供)における独自の視点の1つは、現役世代と将来世代、という発想でしょうか。

 先日、ある方の話を聞いている時、自治体が何か施設を作るにしても行政サービスを提供するにしても、その原資を将来世代に負担させるためにあえて公債を発行する、という趣旨の発言がありました。

 あえて、なのか、純粋に資金調達という視点なのかはさておき、いずれにしても現役世代と将来世代の負担と受益をどう考えるのか、は重要な視点の1つでしょう。
 
 
 ある自治体では、

  社会資本形成の世代間負担比率=負債÷(事業用資産+インフラ資産)

という比率を公表しています。資産残高に占める負債残高の割合を将来世代の負担と位置付ける、という意味でしょう。

 また、別の自治体では、

  社会資本形成の将来世代負担比率=(地方債残高+未払金残高)÷公共資産合計

という比率を公表しています。未払金を加えていますが、基本的には上の指標と同じ意味合いだと思われます。
 
 
 かつて、監査法人在籍時代に経理担当者の方から、「試算表を三次元で作ることはできないのでしょうか」と質問されたことがあります。その時は唖然として、何と答えたのかも覚えていません。しばらく監査チームでは「三次元くん」という呼称が話題になったことだけ覚えています(すみません)。

 でも、今となっては四次元で試算表なり財務書類を作りたいところ。しばらくは、こうした指標に慣れ親しんでいくことになるとは思うのですが。

カテゴリー:船戸明の公会計改革「待ってくれ!」, 財務書類(公会計)

純資産変動計算書の重要性

投稿日時: | 投稿者:

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 民間企業の会計の大きな目的は、利益を計算し、出資に応じた資源配分を決めること。

 一方、地方公共団体の会計(予算含む)の大きな目的は、出資に応じない対価性のない資源配分を決めること。

 とある研修講師の準備をしながら、そんなことを考えていました。その違いが、民間企業では損益計算書が作成されるところ、公会計では行政コスト計算書と純資産変動計算書が作成されるという点に表れているのでしょう。

 それともう1つ、なぜ地方公共団体の財務書類で純資産変動計算書が重要なのか。私も明快な答えを持っていないのですが、現役世代と将来世代でどう資源配分をするのかを表現できる(可能性がある)のが純資産変動計算書だから、ということではないでしょうか。

 重要なことは、その1年でいくら儲けたかではなく、現役世代と将来世代で負担と受益をどう分かち合うか。つまり、時間軸を伸ばして考えなければなりませんので、公会計の財務書類は少し立体的に考えないといけないのかもしれません。

 そのあたりを、講師の準備をしながら考えていければと思っています。

カテゴリー:船戸明の公会計改革「待ってくれ!」, 財務書類(公会計)

50年経つと

投稿日時: | 投稿者:

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 公会計に基づく財務書類を作る。その際、必ずといっていいほどついて回るのが、どう利用すればいいのか、という話です。

 日常業務とはプラスアルファで、新しい仕事をしなければならない。
 しかも、利益を目的としていないため、統一的な指標がない。

 そのような状況の中、「財務書類を作成してどうなるのか」という疑問が生ずるのも無理ないことなのでしょう。
 
 
 先日もとある自治体でそんな話題になりましたので、50年くらい経たないと本当の意味での利用価値は出てこないのかもしれませんね、という話をしました。

 50年というのは大げさなのですが、要するに、今ある資産がすべて入れ替わるくらいの時間です。既存資産の評価に関して、各自治体は開始残高を評価していますが、その計算はいわばフィクションと言っていいでしょう。

 たとえば20年前に整備した道路や橋梁。その取得価額がいくらかなんて、ほぼ分かりません。そこで、幅員別の標準価格とか、そういった仮定を置いて計算されているのが資産評価です。
 
 
 分析の前提となる数字の正確性が確保されるまでに50年。あと、もう1つ、実は報告会計としての財務書類そのものよりも大事なのは、その前提となっている「発想」ではないかと考えています。

 その典型が「コスト」であり、「ストック」なのでしょう。

 コスト意識を持つこと。
 ストックの価値を認識すること。

 そこから管理会計的な発想が生まれ、構築した資産を大事に使うという発想も生まれる。そのためには、複式簿記・発生主義の発想に慣れ親しむ必要がありますし、少なくとも10年は財務書類を作りつづけないと見えてこないものがあると私は思っています。

 もっとも、自治体の担当者ご自身が数年で交代されていく中、その発想を根づかせるのが難しくもあるのですが。
 
 
 ともかく、何かと「利用」が叫ばれますが、作る前から「何に使えるかが分からないこと」が公会計の不思議なところなのだ、くらいに考えた方が、気が楽になるかもしれません。

カテゴリー:船戸明の公会計改革「待ってくれ!」, 財務書類(公会計)

二者択一ではなく

投稿日時: | 投稿者:

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 単式簿記か複式簿記か。
 現金主義か発生主義か。

 地方自治体の会計と、民間企業の会計を比較するとき、ややもすればそういう単純な構造で語られてしまうケースが多いように感じます。

 でも、おそらくは、

 単式簿記も複式簿記も
 現金主義も発生主義も

なのだと思います。地方自治体の制度会計として、単式簿記・現金主義が採用され、長い年月を積み重ねてきたことには、それなりの理由があるはず。そこにしっかり目を向けた上で、複式簿記・発生主義の効用をいかす。そんな視点が必要なのではないか、と。

 民間企業でも、貸借対照表(財産目録)が重視された時代があり、損益計算書が重視される時代に移りました。一方、損益を取り繕って、資金繰りが回らず倒産する会社も登場。キャッシュフロー計算書が導入され、それこそ「単式簿記も複式簿記も」状態になっています。

 単式簿記も複式簿記も。
 民間企業も地方自治体も。

 それぞれの役割と居場所を共通認識することから始めたいと思います。

カテゴリー:船戸明の公会計改革「待ってくれ!」, 財務書類(公会計)

公会計は体脂肪計

投稿日時: | 投稿者:

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 公会計は体脂肪計と同じではないか。

 最近、そんな風に感じます。

 なければないでいいのかもしれないけれど、あった方が自治体財政が健全か(体が健康か)の指標が増える。それだけで万全とは言わないけれど、判断の一助にはなる。そんな位置づけと考えることもできるのではないか、と。

 では、どんな会計基準を採用するか。

 固定資産に計上するのは、50万円以上か、100万円以上か。
 どの範囲の資産を、売却可能資産として扱うか。

 いろいろな判断基準があり得ます。

 でも次のように考えてみたらどうでしょう。

 公会計を導入するかどうか=体脂肪計を買うかどうか。
 公会計でどんな会計基準を採用するか=体脂肪計に朝のるか、夜のるか。

 体脂肪計に朝のるのがいいのか、夜のるのがいいのか。正解があるのかもしれませんが、どちらでもいいので、継続して傾向を知ることが大事なのだと、私は思います。

 あった方がいい公会計は、皆さん導入しましょう。
 あと、どんな会計基準にするかは、極論すればどんな方式でもよく、ただ一度採用したらそれを継続しましょう。

 そう考えれば、公会計=体脂肪計、もあながち変な話ではないと感じています。

カテゴリー:船戸明の公会計改革「待ってくれ!」, 財務書類(公会計)

新方式が広がれば

投稿日時: | 投稿者:

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

 かつての基準モデルと改訂モデルが統合され、新しい会計方式での財務書類導入が、総務省主導で進められています。

 今年に入って基準が公表され、その中では、3年後の平成29年度までに全地方公共団体で新しい会計方式を整備することが求められています。

 先日(7月28日)の日経新聞によれば、全国自治体の98.2%にあたる1755団体が平成29年度までに新基準による財務書類を整備するとのこと。総務省は、

「(新方式が広がれば)古くなった施設の統廃合や再整備が効率的にできるようになる」

と述べています。
 
 
 違うんじゃないかなあ。

 そのコメントを読んで、そう思いました。

 早い段階で委員会設置会社に移行し、統治の優等生と言われた東芝。その東芝に何が起こったのかは、報道を見ての通りです。

 制度を運用するのは、人。思想家で武道家の内田樹先生は、制度についてこうおっしゃっています。

「制度設計がどれほど適切でも、運用者に知恵と技能がなければ、制度は機能しない。逆にどんな不出来なシステムでも、「想定外のできごと」に自己責任で対処できる「まともな大人」が要路に一定数配されていれば、システムクラッシュは起きない」(5月22日「内田樹の研究室」より)。

 公会計でも同じでしょう。新しい会計方式が入ったからうまくいく、というのは、やや単純に過ぎるのではないでしょうか。

 施設の統廃合1つ取っても、様々な人が絡んでくる話ですので、現場ではかなり泥臭い仕事もしなければ事は進まない。そう思います。

 制度を運用するのは人。新しい制度が入った今だからこそ、あらためて認識する必要があるのではないかと、私は思います。

カテゴリー:船戸明の公会計改革「待ってくれ!」, 財務書類(公会計)

帳簿と世界史

投稿日時: | 投稿者:

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。

『帳簿の世界史』という本があります。南カリフォルニア大学教授のジェイコブ・ソールさんの著作で、村井章子さんの翻訳により、文藝春秋から刊行されている書籍です。

 その冒頭、フランスのルイ一四世の話題が登場します。

「・・・ルイ一四世は年に二回、自分の収入、支出、資産が記入された新しい帳簿を受け取った。あれほどの絶対的地位にいる君主が王国の会計に興味を示したのは、初めてのことである。太陽王が自分の王国の決算をつねに把握するために帳簿を持ち歩いたのだとしたら、これこそが近代的な政治と会計責任の始まりだったように見えた」(P.9)。

 そして、次のようにも。

「会計責任とは、他人の財貨の管理・運用を委託された者がその結果を報告・説明し、委託者の承認を得る責任を意味する」(同)。

 会社であれば、株主の財貨を出資として委託される。
 国であれば、国民の財貨を税金として委託される。
 自治体であれば、住民の財貨を税金として委託される。

 その委託された結果を、委託してくれた人に説明し、理解をしてもらう。委託された財貨を、どう使い、その結果どのような効果が生じ、将来に向けてどのような展望になっていくのか。その説明責任が会計責任の原点だ、ということでしょう。

 株主総会が形骸化しようが儀式化しようが、決してなくならない理由も、この基本構造にあるのだと思います。
 
 
 それはさておき、帳簿の歴史を見ていくと、必ずイタリア、オランダ、イギリスの話題が出てきます。それも12、3世紀に遡り、ルネサンスや産業革命といった歴史の流れと切っても切れない関係が登場します。その度に思います。当時の時代の雰囲気を追体験しなければならない、と。

 1340年にはジェノヴァ市政庁で帳簿が記録されていた。その事実を知ることが歴史を学ぶ、ということではないでしょう。想像力をフル回転して、当時の世の中の空気がどういうもので、人々がどんな生活をし、役人というのがどういう役割を持っていて、そしてどういう思いでこの帳簿が書かれたのか。自分の身を当時に置いて、想像すること。それが歴史を学ぶ、ということなのだと思います。
 
 
 批評家の小林秀雄さんは、こんなことをおっしゃっています。

「今の歴史というのは、正しく調べることになってしまった。いけないことです。そうではないのです、歴史は上手に「思い出す」ことなのです。歴史を知るというのは、古えの手ぶり口ぶりが、見えたり聞こえたりするような、想像上の経験をいうのです」(昭和45年、「文学の雑感」と題した学生向けの講演、『学生との対話』新潮社、P.24)

 帳簿の歴史から、世界の歴史を思い出す。『帳簿の世界史』という本がそんな旅の一助になるかは、今、始まったばかりです。1つずつ思い出しながらなので、かなりの時間がかかりそうですが、ゆっくり丁寧に読み進めていこうと思っています。

カテゴリー:船戸明の公会計改革「待ってくれ!」, 財務書類(公会計)

基準統一のポイント

投稿日時: | 投稿者:

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
 公認会計士になると送られてくる月間機関誌に『会計・監査ジャーナル』という雑誌があります。
 自慢ではありませんが、まともに読んだことがありません。いや、読まなければいけないのでしょうが、読もうという気が起こらないのです。
 あの内容。
 あの重さ。
 あの分厚さ。
 どうも、持ち歩くことを生理的に受け付けない。そんな雑誌です(失礼ですね)。
 ところが、今月送られてきた2月号は、ふっとなんとなく目次を眺めてみました(普段はそれすらしないのです)。すると、たまたま、公会計に関する記事が掲載されているではありませんか。
「座談会 地方公会計制度の新展開と公会計協議会の役割」と題した記事です。
 その中で、総務省の自治財政局財務調査課長の原邦彰さんが、これまでの「基準モデル」と「総務省方式改訂モデル」が1つの基準に統一されことに関して、3つのポイントを指摘されています。カッコ書きは、私の補足です。
1.複式(簿記)仕訳をきちんと行ってください、決算統計から作るもの(改訂モデル)からは、もう脱却してください
2.固定資産台帳をしっかり作っていただくことが、出発点になる
3.同じ基準で全ての自治体に作っていただきますので、比較ができる
 その上で、国で標準的なシステムを開発して自治体に無償で配る方向で検討していることや、これまでの「作って見せる公会計」から「使う公会計」にシフトし、予算に反映させることが重要であることを語っておられます。
 まず、システムの無償供与の件ですが、その主眼はコストです。大規模自治体から、小規模自治体まで、ばらばらにシステム導入となると、「事務負担も大変」で「お金もかかる」と。
 私の理解では、システムというのは経営そのものです。経営者の思想や方針、戦略が反映されるのが、システムでしょう。少なくとも、民間企業ではそうだと思いますし、民間企業で、たとえば郵便局と佐川急便と船戸運送(仮)がシステム統一しようという話には、絶対にならない。なるはずがないのです。
 自治体にも民間企業の発想を。
 自治体も、その地域の特性を生かした活路を。
 そう叫ばれることが多いはずですが、ことシステムに関しては、国の一括管理のもとに置かれることを、自治体そのものも望んでいるような気がします。
 もう1つの、使う公会計について。
 今でも、公会計財務書類を作成する現場の方々の間には、作ってどうなるんだ、という本音があるのではないかと想像します。
 公会計財務書類を作って活用すべき。
 公会計財務書類を作って何になるのか。
 この2つの議論がせめぎ合っている、と。
 それぞれの立場での真実を語っておられると思いますので、どちらが正しいということではないでしょう。ただ、どちらの意見にも共通しているのは、財務書類は有効でなければならない、という前提です。私は、そこに疑問を感じています。
 いや、財務書類は無用の長物だ、という意味ではありません。そうではなく、今のものさし、今の尺度だけで、有効だとか使い道があるとかないとか議論することに、大きな意味はないのではないか。そう感じているのです。
 先日、とある自治体の方と話をしていて感じたのですが、自治体が預る資産というのは道路にしろ、学校にしろ、公園にしろ、50年単位で考えていく資産ばかりでしょう。そんな資産が90%を占める財務書類について、この2年、3年という視野で使い道を論じたところで仕方ありません。50年作り続けて初めて見えてくるものがある。それくらいの長期的視野を持つ必要があると、私は思っています。
 簡単に言えば、とにかく作り続けましょう、と。
 統一した公会計により、自治体間の比較可能性が確保できる。よく言われることですが、比較することよりも何よりも、まずは作り続けることと、作り続けることで自分たちの足元にはどんな資源があるのかを発見することのほうが、よほど重要なことだと、私は思います。

カテゴリー:船戸明の公会計改革「待ってくれ!」, 財務書類(公会計)

財務書類の様式

投稿日時: | 投稿者:

こんにちは、大阪発公会計ブログ担当の船戸明(公認会計士)です。
 公会計の財務書類は、次の4つで構成されています(久しぶりに公会計の話題です)。
  貸借対照表
  行政コスト計算書
  純資産変動計算書
  資金収支計算書
 言うまでもありませんが、自治体にとって、利益を出すことは目的ではありません。そもそも、利益が出ないこと、非効率で民間ではどうしようもないことを引き受けるのが自治体の役割とも言えるでしょう。
 もちろん、だから非効率でいいということではありません。ただ、儲けを出せとか、効率よくやれ、という指摘に対しては、少し立ち止まって考える必要があると私は考えています。
 財務書類に話を戻します。そんな自治体の特徴は財務書類にも表れていて、単にコストや収益を示す行政コスト計算書だけでなく、純資産全体の動きを示す純資産変動計算書が重視されてきました。これまでも、そして、これからも。
 3年以上にわたって開催されてきた総務省の「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」ですが、先月、「今後の新地方公会計の推進に関する研究会報告書」が報告され、新しい財務書類の様式も提示されています。
 報告書自体は、こちらから見ることができます。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000281820.pdf
 この37ページ以降に、財務書類の様式が示されています。中でも、おっと目を引いたのが、40ページの「行政コスト及び純資産変動計算書」。
 先にも述べた通り、自治体の活動においては、純資産全体の動きを示すことが重要です。そして行政コストも、大きく見ればその純資産の動き(減少)の一項目でしかない。そう考えると、行政コスト計算書を独立した財務書類ではなく、純資産変動計算書の一構成要素と捉えることも可能なはず。
 そうした発想のもとで示されたのが「行政コスト及び純資産変動計算書」です。
 一見してわかるのは、その「見た目」の独特さ。良く言えば「斬新」、悪く言えば「見慣れない」。案の定、研究会においても、わかりにくいという指摘もなされていました。
 ただ、その指摘を聞きながら、1つ考えたことがあります。
 わかりにくい、って、誰にとってですか、と。
 わかりやすい、わかりにくい、というのは、所詮、主観的な話ですよね。自分たちの価値観から見てわかりにくくても、他の人が見ればわかりやすいかもしれない。あるいは、今の時代から見ればわかりやすくても、次の時代に見ればわかりにくいかもしれない。
 つまり、絶対的にわかりやすい、ということはあり得ないのだと思います。
「いい姿勢」について、誰にとっての(軍の上司なのか、学校の先生なのか)いい姿勢かによって、その姿勢は変わる。そう指摘したのは、『ことばが劈(ひら)かれるとき』(ちくま文庫)を書かれた竹内敏晴さんです。
 わかりやすい財務書類も同じでしょう。誰にとってのわかりやすさなのか。
 それともう1つ、そもそも自治体の活動自体、決してわかりやすいものではないでしょう。非常に複雑で、効率も悪く、数字で表現できないものもあるかもしれない。そういった複雑多岐にわたる活動なのですから、一見してわかるような財務書類に表現できる、という前提自体に問題があるような気もします。
 だったらどうするか。
 私が思うのは簡単で、とにかく作ってみる。何年も、何年も、一定の思想と規則に基づいた財務書類を作っていく。そして作る側も、見る側も一定の勉強をしつつ、歴史を積み重ねることで、共通言語としての財務書類が立ち上がる。そんなものではないかと思います。
 いろんな立場からの賛否があるのは当然ですが、もともと答えのない世界に新しいレールを敷こうとしている動きです。これまでの議論に敬意を表しつつ、じっくり眺めて、じっくり考えてみたいと思っています。

カテゴリー:船戸明の公会計改革「待ってくれ!」, 財務書類(公会計)